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バイリンガル育児

バイリンガル子育ての「i +1 」とは?

 

こんにちは! 韓国でバイリンガル子育て奮闘中のまめちゃん( @mame_chang )です。 誰かに何かを教えたことがあったり、自分の子どもに勉強などを教えていると

 

まめちゃん
これはまだこの子(人)には難しいかな...。

 

と思ったり反対に

 

まめちゃん
これは簡単だな。もっと難しいものでもできるはず!

 

と思ったことがあると思います。

 

そして、そのように考えたら教材や練習のレベルを上げたり下げたりして相手に合うように調節するものだと思います。 誰かに何かを教えたことがある人は、経験的に知っているこのレベルの調節。レベルが低すぎたり反対に高すぎるとどうして勉強がうまくいかないのでしょうか。

 

今回は海外でのバイリンガル子育てについて、「小学生」くらいの子どもに日本語を教える「教材選び」について第二言語習得の「仮説」も紹介しながらお話しします。




バイリンガル子育ての「i +1 」とは?

ところで、バイリンガル子育ての「i+1」とは? と言われても、一体なんの話しかわからない人もいると思います。 「i+1」について説明する前に、日ごろどうやって子どもの教材を選んでるかについて少しお話をしたいと思います。

 

日本に住んでいて日本の学校に通っている場合は、現在在籍している学年に合わせた教材を選ぶのが一般的だと思います。もちろん、復習が必要な場合は下の学年の教材に戻ることも珍しいことではありません。

 

それでは、海外で子育て中の方で自分の子どもに日本語を教えている方は、どのように教材を選んでいるのでしょうか。統計などはないのですが、おそらく次のような方法だと思います。

  1. 子どもの学年に合わせる。
  2. 子どもの興味に合わせる。
  3. 子どもの日本語の実力に合わせる。

 

1.は、例えば駐在で家族で海外に住んだ場合に日本の学校で勉強していたことの続きからやる時や、海外生まれで海外育ちの子どもの場合は家庭や補習校でかなり勉強して日本での学年に追いついている場合が考えられます。そして選ぶ教材は通信教育の海外受講や、日本から買ってきた学年に合った問題集、日本の学校の教科書などです。

 

2.は、学力もですが、子どもが興味やモチベーションを持っている間になんとか日本語に触れてもらおうというパターンで、えんぴつと紙を持って机に向かういわゆる「お勉強」でないこともあります。具体的には日本の漫画やアニメ、歌などの場合や子ども自身の希望で学年が上の教材を使うこともあります。

 

3.は、実際の学年と比べ日本語の力が低い場合、実際の学年よりも下の学年の教材を使うパターンです。海外で子育てをし子どもに日本語を教えていると、幼稚園児のころは、なんとかなっても小学生になり滞在国の学校(現地校)に通っていると宿題があったり友達と遊んだり習い事があったりして日本語の勉強が滞ることもあり、だんだんと実力が停滞してくることもあります。

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「i+1」という仮説

さて、ではやっとここで「i+1」とは何かについてお話します。 これは、第二言語習得のひとつの仮説です。 アメリカにクラッシェン(Stephen Krashen)という言語学者がいます。このクラッシェンは五つの仮説を立てていますが、そのうちのひとつが「インプット仮説」と呼ばれるもので「i+1」とも表現されます。

 

つまり・・・

これは、言語の学習者は彼らの現在のレベルより、僅かに高いレベルの言語のインプットを理解した時に進歩するとする。Krashenは、このレベルを「i+1」と呼び、「i」が現在の言語習得のレベルで、「+1」が次のレベルとの差分とした。

Wikipedia 「インプット仮説」より

 

というものです。 ・・・なんだか難しいですね。勉強している言語を「日本語」として、もうちょっとわかりやすく言うと次のようになります。

 

「i+1」の「i」は、「今、日本語がどのくらい上手にできるか」を表します。そして、日本語を勉強している人にとって少しだけ難しい内容を聞いたり読んだりして「わかった!」という時に日本語の力は伸びて「+1」という次の段階に入る、というものです。




海外で子どもに日本語を教える時の教材選びは?

駐在ではなく、国際結婚などで海外で生まれた子どもに日本語を教える場合、先ほどの「どうやって子どもの教材を選んでる?」にあるように、子どもの学年だけで教材を選べないことも多いと思います。

 

実際、我が家でも小学校1年生の頃は学年で選んでも大丈夫でした。その頃は通信教育の海外受講をしていましたが、韓国の小学校の宿題や塾、友達付き合いなどで少しずつ遅れが生じてきました。親としてはなんとか学年に合わせたいと思うのですが、思うように行かないこともあり、どうしようかとかなり考えました。

 

そして、学年が上がっていくと、下の学年の教材を子供に与えるのはなんなく気が引けるものです。うちの子の場合、漢字がネックになって、なかなか進まず勉強した漢字もかなり意識しないと定着しません。焦りが生じたこともあります。

 

また、韓国には正式な補習校(日本語補習授業校)がないため、定期的に日本語を続けて勉強するには、親子でかなりのモチベーションと目標が必要です。日本の隣の国で外国語としての日本語教育は盛んなのですが、日系の子どもたちを対象とした日本語/国語教育は、親と自助グループ、日本の教材の通信教育(海外受講)ぐらいが頼りなのが現状です。

 

こうなると、現地校に通っている子どもで補習校もない......。という状態では、実際の学年に合わせて教材を選ぶと、実力に差がありすぎて子どもは難しく感じ、それが勉強したい気持ちを下げていく原因となります。




経験的にはわかっていることだけど

さて、話を戻します......。このクラシェンの仮説で言うと、学年に合わせて教材を選ぶのではなく今の実力に合わせて選び、今の実力よりも少し難しいものを読んだり聞かせたりすると「+1」の域に入ることができるというわけです。

 

経験的にわかっている「実力に合ったものを選ぶ」ことの意味は、このクラッシェンの仮説が後押ししてくれる気がして、現在の学年よりも低い学年の教材を選んだとしても

 

まめちゃん
この子の子にとって、これが今の「i」なんだ......。

 

と考えることができそうです。また、がんばったら手が届くくらいのものが取り組みやすいし、できた時にほめられると、さらにやる気もアップしそうです。

 

海外で自分の子どもに日本語を教えようとする時、自分の子どもの今の実力である「i」を把握するのは、主に親だと思います。もちろん、補習校などがあれば親と一緒に子どもの実力を把握できます。そのため、いくら実際の学年より低い内容の教材を選んだとしても、

 

まめちゃん
気が引ける......。

 

と思わなくてもよさそうです。




まとめ

今回は、小学生あたりを対象とした教材選びの提案の1つとして、クラッシェンの「i+1」という第二言語習得の仮説をご紹介しました。 もともとこれは第二言語習得の仮説であって、海外で育つバイリンガル児を想定したものではありません。

 

しかし、だからと言ってそこに学ぶものがないわけではなく、子どもにとってちょっと頑張ったら手が届きそうな目標を立てて取り組んでもらえれば、その目標が達成された時に子供は満足すると思いますし、また次の目標に向かって頑張ろう!と思ってくれたら親としては嬉しいと思います。

 

またご参考までに、第二言語習得の世界ではこの仮説に対する批判がないわけでもありません。 それを考慮したとしても、海外でバイリンガル子育てを実践する上でやっぱり参考にはなる仮説だと思います。




  • この記事を書いた人

まめちゃん

韓国で2人の子供達をバイリンガルに育てています。大学院生の頃は第二言語習得を研究していました。日本語教師の経験が約20年。子供達のバイリンガル育児や国際結婚、バイリンガル育児について第二言語習得や日本語教師的な視点からブログを書いています。 時々韓国の義実家に関する泣き笑いネタもあります^^;

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