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アイデンティティは海外生活で変化する? 22年間の研究結果から

 

こんにちは!まめちゃん(@mame_chang)です。韓国に住んで約15年が経ち、そのうち約10年は子どもたちを日韓バイリンガルにしようと毎日努力中です。

 

日本で生まれ育った私が海外で子どもを育てることになった時、まず思ったのは、

 

まめちゃん
子どもには日本語をちゃんと教えておこう。

 

ということです。また、言語だけでなく日本の文化や考え方なども知っておいてほしいと思ったものです。そして思春期や反抗期になったら訪れるアイデンティティについての悩みや葛藤について、自分なりに調べたり考えたりしたものです。

 

ところで、このようなアイデンティティについて色々と調べている時に、見つけた研究論文があります。

 

まめちゃん
おっ? アイデンティティについてだ......。

 

と思って読み始めましたが、最初に想像していた内容とは違いましました。バイリンガル育児に関するものではなく、日本で成長した人が大人になってから海外にいきそこで生活していると、そのアイデンティティは変わるのかというのを長年にわたって追いかけている調査です。

 

今回は、アイデンティティの中でも海外て育つバイリンガル児の話ではなく大人を対象にした研究論文について簡単に紹介し、私が考えたことやバイリンガル育児に活かせる事についてもお話したいと思います。





アイデンティティは海外生活で変化する? 22年間の研究結果から

まず、こんな疑問が湧いた人はいないでしょうか?

 

アイデンティティってよく聞くけどはっきり意味がわからないなぁ。

 

辞書を見ると次のように書いてあります。

 

自己同一性などと訳される。自分は何者であるか,私がほかならぬこの私であるその核心とは何か,という自己定義がアイデンティティである。

コトバンク「アイデンティティ」より

 

これも、なんとなくわかったような......?!

 

つまり、平たく言うと

 

私ってどこの誰? 私は何者なの?

 

という自分自身に対する質問にはっきりと答えることができるか?ということです。

 

もっと具体的に私自身を例にしていうと、私の場合は

 

私は韓国に長年住んでいるけど、日本の関西出身で関西人。
まめちゃん

 

といったところでしょうか。では、私の話はこのぐらいにして今回ご紹介する研究についてお話することにします。

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どんな研究なの?

まずは研究の概要です。

 

★概要 

誰の研究?:田中真奈美

どこの国でした研究?:アメリカ

研究期間はどのぐらい?:22年以上

誰を研究したの?:アメリカに長期滞在する1人の日本人女性

研究の方法は?:インタビュー。22年間の間に8回のインタビューをしてアイデンティティに関連する質問をし、アイデンティティの変化を調査し分析。

研究の結果、何がわかったの?:アイデンティティには種類があるが海外に長い期間滞在することにより変わる部分もあれば変わらない部分もある。

論文のタイトルは?:「海外生活がアイデンティティに与える影響 -あるアメリカ在住日本人の経験を通しての考察ー

 

 

また、この論文ではアイデンティティには要素が10個あることを他の論文を引用して書いています。

 

海外生活がアイデンティティに与える影響 -あるアメリカ在住日本人の経験を通しての考察ー」より

 

そしてこの中で海外滞在が長期に渡った人のどんなアイデンティティがどのように変わったのか、その22年間の研究をもとに書いています。

 

そして、その変化を追いながら4つに分類しています。その4つとは次の通りです。

 

1.日本的アイデンティティ

2.アメリカ的アイデンティティ

3.中間的アイデンティティ

4.その他




研究結果

要素が10個あるアイデンティティですが、これを4つに分類したアイデンティティに当てはめると次のようになります。

 

1.日本的アイデンティティ

→民族

2.アメリカ的アイデンティティ

→宗教、家族、個人

3.中間的アイデンティティ

→地理、文化

4.その他

→階級、職業、性、組織

 

そして、この研究の対象となったら日本人女性は大学の時にアメリカに行ったのですが、大学以降の留学の特徴として「能動的アイデンティティ」がちゃんと確立できていたらアイデンティティが揺らぐことはないという話を引用しています。

 

「能動的アイデンティティ......」こんな言葉、全然聞きなれないと思いますが簡単に言うと次のようなことです。

 

「自分がしたいことと社会のルールの間で、それぞれを自分で学び取り自分の中でバランスよく身につけていく力」

 

ということのようです。これをさらに具体的な例としてアメリカに留学する日本人とすると次のようになると思います。

 

①自分がやりたいこと(例:英語を勉強してネイティブみたいになりたい! アメリカに住んでアメリカ人のような生活がしてみたい)。

②アメリカ社会はどんな社会?何が許されていて何が許されていないか?

 

この①と②をバランスよく学んで吸収し自分のものとしていく力があること......。

 

となりそうです。

 

また、アメリカで学校に通ったり仕事をしたり結婚したりしていく中で、自分がアメリカで置かれている立場や考え方に変化が現れています。それを分類したものが先ほどの4つです。

 

ある部分はアメリカ的となり、ある部分は中間的となりある部分はどこにも当てはまらず...  そして変わらず日本的な部分も持つという結果でした。この日本人の方が、日本人として変わらない部分をもっていられるのは、やはり先ほどの「能動的アイデンティティ」が確立した後にアメリカに行ったからとのことです。



研究結果は私にも当てはまるのかな

韓国に住んで約15年の私。先ほどの研究の22年にはまだ届いていませんが、韓国滞在が長くなってきました。この研究結果が私自身にも当てはまるのか、ここで考えてみたいと思います。韓国滞在は私は大学を卒業数年後からで、韓国での立場は学生としては短期間、あとは日本語の先生をしたり結婚して子育てを始めたりしました。

 

「能動的アイデンティティ」が韓国に住み始めた当時の私にあったか...?というと、

 

①自分がやりたいこと

②韓国社会のルール

 

①の自分がやりたいことは確かにありました。韓国語を学びたい、韓国に住んでみたい、韓国人の友達が欲しいなどと考えていたものです。社会のルールについては、あまりよくわからないまま韓国に来ました。そして生活しながら経験により学び身につけていったようなの思います。

 

また、それぞれをうまく吸収しバランスよく身につけていっているかというと、日本語教師をしたり子供たちに日本語や日本文化を伝えていこうと意識して実践していることを考えると多分私のアイデンティティの項目も4つに分けることができますが、割合は少し違うかもしれません。



研究結果から思うこと

今回ご紹介した研究はアメリカに数多くいる長期滞在の日本人の中で1人だけとなっています(研究開始当時は3人だったのが完全帰国した人などがいた関係により1人になってしまったとのことです)。そのため、この研究結果が全てではないし決して一般化できるわけではありません。しかし22年という年月のアイデンティティの変化を追うのは相当根気がいることで、それだけでも価値があると思います。

 

また、「能動的アイデンティティ」とはとても興味深いもので、もし大学生以降の留学であっても能動的アイデンティティが確立できていない人の場合は、アイデンティティの揺らぎが起こるだろうと思います。

 

このような研究結果をみて、そして現在子どもたちを日韓バイリンガルにしようとしていることを考えると、将来子どもが日本や他の国に留学したいとか言いだしたら、その時期子どもの状態は子供のアイデンティティが後に揺らぎやすいかどうの参考になると思いました。

 

留学なんてまだまだ先の話ですが、このような研究があるというのを心に留めておくだけでも知識になると思いました。



まとめ

今回は、アイデンティティについてアメリカに住む日本人を約22年の間調査してその人のアイデンティティがどう変化するのかなどを調べた結果をご紹介しました。そしてそれは私に当てはまるのかや現在バイリンガル子育てをしている私にどう参考になるのかも考えてみました。

 

今回のポイントは次の通りです。

 

ポイント

・アイデンティティにはいくつかの種類がある。

・海外に長く滞在するとアイデンティティが変化する部分がある。

・大学からの留学は能動的アイデンティティが確立していたらゆるぎにくい。

・この研究結果はバイリンガル児が将来、留学したいと言った時の参考になる。

 

過去の研究結果が自分の人生や子育てに参考になりそうなら、ぜひ参考にしたいものですね。




    • この記事を書いた人

    まめちゃん

    韓国で2人の子供達をバイリンガルに育てています。大学院生の頃は第二言語習得を研究していました。日本語教師の経験が約20年。子供達のバイリンガル育児や国際結婚、バイリンガル育児について第二言語習得や日本語教師的な視点からブログを書いています。 時々韓国の義実家に関する泣き笑いネタもあります^^;

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