こんにちは〜。 韓国で二人の子ども達を日韓バイリンガルに育ててるまめちゃん(@mame_chang)です。 海外在住、特に生まれも育ちも海外の子どもに「日本語を受け継いで欲しいなぁ」と考える人がいます。 私もそんなひとりで、子どもがお腹にいた時からお腹の子供に日本語で話しかけていました。
ところで、私には日本語教師の経験が約20年あるので、日本語が母語ではない人に日本語を教えるのは慣れています。
・「母語」と「母国語」の違いはこれ ↓↓
しかし、上の子を妊娠したまだ見ぬわが子にどうしたら日本語を受け継いでもらえるのか、全くわかりませんでした。 しかも当時はバイリンガル子育て関係の本を探すと日本国内の子供にいかに英語を習得してもらうかという類の本が多かったです。
では、子どもが言語を覚えるなら「発達言語学」とも思いましたがいきなり専門書を読むには「研究色」が強くて「じゃ、結局具体的にどうしたらいいの?!」となります。
そんな話はさておき、今回の話のきっかけは以下のツイートでした。
、
日本在住の #日英夫婦 の🇬🇧英国人パパ(英語の先生)と話した息子さんは英語できるか聞くと
全くダメ🙅♂️
子供の頃から英語で話しかけたけど日本語で返事。理由不明(理由要解明)
諦めて会話は日本語に
大学生の頃自分で英語に目覚めて英語を専攻#国際結婚 でも親が語学教師でも結局は本人次第
— バイリンガル育児@まめリンガル (@mame_chang) 2018年12月25日
このツイートでは「本人次第」と書いたのですが、その後「本当にそうかな......?」と思い、いくつかの事例を集めてみました。 今回は、海外で日本語や英語など言語を教える語学教師の子どもはみんな、その親が教えてる言語がわかるのかな?! というふとした疑問からいくつかの事例と共にお話をしたいと思います。
語学教師の子どもはみんなバイリンガル?! 4つの事例
私は最初に書いたように日本語教師の経験が約20年、そして英語教師も数年したことがあります。 その経験やネットワークから周りを見ていて思った
「語学教師の子どもはみんなバイリンガル?!」
は、結論を先に言うと
「はい」と「いいえ」 に分かれます。 さらに細分化すると4つに分けられるように思いました。 その4つとは、
「子どもがバイリンガル」
1.子どもは親の母語ができる
2.子どもは親の母語と共にできる言語が複数ある
「子どもがバイリンガルではない」
3.子どもは親の母語はできない
4.子どもはできる言語は1つだけ
では、事例と共にこの4つについてもう少し詳しく見てみます。
「子どもがバイリンガル」
1.子どもは親の母語ができる
Aさんの場合(日本人ママ)
Aさんの職業: 日本語教師(韓国語も多少わかる)
滞在国 :韓国(日韓夫婦、ご主人は日本語はわからない)
子ども :2人
子ども達ができる言語 : 韓国語、日本語
Aさんは、お子さん2人を育てながら非常勤や専任として日本語を教えていました。 その傍ら、住んでいる地域の日本人の集まりに定期的に参加したり、休みには子連れで1ヶ月ほど一時帰国したりしていました。
しかし、その後ご家族で英語圏に移住したため現在は韓国語と日本語に加え現在は英語の習得も目指しトリリンガルに育てようとしているそうです。
2.子どもは親の母語と共にできる言語が複数ある
Bさんの場合(中国人ママ)
Bさんの職業: 中国語教師(韓国語、日本語もわかる)
滞在国 : 韓国(韓中夫婦、ご主人は日本語堪能。中国語はわからない)
子ども : 1人
子どもができる言語 : 韓日中の順にできる
Bさんご夫婦は最初に日本に住んでいたこともあり夫婦の会話は二人とも母語ではありませんが日本語です。それを聞いて育ったお子さんは日本語ができるようになり学校は韓国の現地校、お母さんとは中国語、韓国語、日本語の混ぜ混ぜで中国語も多少できるようになったそうです。
また学校が休みの時には数週間ほど中国に帰ることもあるそうで中国語の会話はそこでも集中的に伸びたとのことです。
「子どもがバイリンガルではない」
3.子どもは親の母語はできない
Cさんの場合(イギリス人パパ)
Cさんの職業: 英語教師(日本語もわかる)
滞在国 : 日本(日英夫婦)
子ども : 2人
子どもができる言語 : 日本語
ちなみに、このCさんがTwitterでつぶやいた日英夫婦の方です。 Cさんは、20年以上のキャリアを持つ英語の先生で日本在住も長く日本にもすっかり慣れています。 お子さん2人のうち上のお子さんは英語がわかるほうだそうですが、下のお子さんは小さい頃からいくら英語で話しかけても日本語しか話さなかったそうです。
しかし高校生辺りから英語をやろうと目覚めて大学では英語を専攻したそうです。そのため下のお子さんは結果的にはバイリンガルかもしれませんが、あくまでも後で自分で勉強してできるようになった学習者としての後付けバイリンガルと言えるのではないかと思います。
2.子どもができる言語は1つだけ
Dさんの場合(日本人ママ)
Dさんの職業: 日本語教師(韓国語堪能)
滞在国 : 韓国(日韓夫婦)
子ども : 3人
子どもができる言語 : 韓国語
Dさんの場合、家庭環境としてご主人が日本語がわからないのと義理のご両親(韓国人)と同居です。 そのため、家庭内の言語は韓国語となっているそうです。 Dさんはお子さん達が小さい頃は何とか日本語で話しかけたり日本人のママ友と遊んだりして子どもさん達が日本人や日本語に触れる機会を作っていたのですが、仕事が忙しくなり子どもも3人となると段々とあちこちに手が回らなくなってきたし、家ではみんな韓国語だから自分も韓国語が楽だと思ったそうです。
そうこうしているうちにお子さん達は、幼稚園や小学校は現地校に通ううちに日本語がすっかり影を潜めてしまって韓国語のみとなったそうです。
語学教師なのに自分の子どもを教えられないのはなぜ?!
海外で自分の母語を語学教師として教えている教師が、自分の子どもにその言語を受け継いでもらえたりそうでなかったりするのはどうしてでしょうか。 また、語学教師なので自分の学生(学習者)を教えることはできるのに、自分の子どもに自分の母語を教えることができないのはどうしてでしょうか。
それには先程の4つの事例からも少し垣間見ることができましたが、いくつかの理由があります。
それは、以下のような理由です。
1.学生(大人の学習者)に対する語学教育とバイリンガル子育ては違うと考えるから
2.親子だと感情が入るし、なぁなぁになりやすいから。
3.仕事を終えて退勤後、家に帰ってまで「先生」をしたくないから。
4.家庭環境的に日本語はマイナー言語だから。
今回の4つの事例に出てくる方々は全て高校生や大学生、社会人などの大人ですでに母語が他の言語である人たちを教えている語学教師です。 まず、1.ですが私も上の子を妊娠した時に多少戸惑ったことです。 日本語教師の経験が長いといっても生まれたての赤ちゃんに向かってまさか文法用語は使えないし、言葉が出てきても最初は
とか
しか言えない子どもに対して学生(大人の学習者)に教えるように
と助詞が抜けていることを指摘することもできません。 こう考えると確かに違うのですが、語学教師としての経験があると役に立つのは間違いないとそのうち思うようになりました。
また、2.のように親子だと何かと感情が入るので
となったり
と言ってもテレビを見ていたりして子供が自分がしたいことをしている時だと
となり、気がつけばやってなかったり、長くは続かなかったりすることもあります。
また、3.のように仕事で疲れて家に帰ってきているのに家に帰ってきてまで「先生」をしたくない、家では寛ぎたいという人もいます。
そして4.は事例で言うとDさんのように韓国在住で義理のご両親と同居、子ども達も韓国の学校に通っているとDさん以外の家族全員の母語が韓国語となり、家庭内で日本語はマイナーな言語となります。 その中でも「子どもに日本語を!」という意思を貫くのはかなりの精神力が必要で、自分が韓国語をしゃべった方が楽というのはかなり理解できます。なぜなら、私も旧盆や旧正月で義実家に連泊する時は同じような状況になるので、私が韓国語をしゃべった方が楽......と思ったことがあるからです。
語学教師で自分の子どもに自分の母語を教えてるのはどんな人?!
それでは、事例のAさんやBさんは、CさんやDさんと同じように語学教師ですがどうしてお子さん達は親の母語を受け継いでいるのでしょうか。 その理由は、Aさんのようにご主人が日本語がわからないとしても日本人の集まりに参加したり、日本に一時帰国したりしていたからということや、Aさん自身が韓国語はそれほどわかる方ではないということがあると思います。
Bさんの場合もご主人はBさんの母語である中国語はわからないのですが、親子の会話に中国語を入れたり中国に一緒に一時帰国したりしてお子さんが中国語に触れる機会を積極的に作っていました。 しかし、韓国の現地校に通っていることや両親の会話が日本語であることなどから、韓国語→日本語→中国語の順に上手という状態になりました。
つまり、日本人の集まりに子連れで積極的に参加したり家庭でも子どもに覚えて欲しい言語を子供に使っている人、となると思います。
親が語学教師であることは有利なの?!
このように4つの事例を見ていくと、海外在住で親がその国では使われていない言語を教えている場合、その子どもは親の母語ができるようになる場合とそうでない場合に分かれます。
結論として
「海外在住で親がその母語を教える語学教師だからと言って必ずしもその子どもは親の母語ができるわけではない。」
と言えると思います。 しかし、語学教師は教えている言語を客観的に分析してわかりやすく説明することができる職業です。 そのため、自分の子どもに自分の母語を覚えて欲しいと思った時に習得の具合や間違いの理由などはすぐにわかるし、どうしたらもっと伸びるかもわかると思います。 このように考えると親が語学教師であることは有利なのではないかと思います。
ポイントはきっと次の2つです。
1.語学教師として持っている知識や経験をどう自分の子ども用にカスタマイズしていくか。
2.子どもに日本語を教えられる家庭環境で自分も子どもに日本語を覚えて欲しいと思っているか。
まとめ
今回は、以前のTwitterでの自分のツイートをきっかけに、海外在住で自分の母語を教えている語学教師の子どもはみんなその親の母語わかるバイリンガルなのかな? というふとした疑問から4つの事例を紹介しました。 答えは、親が語学教師だといっても子どもはバイリンガルであることもあれば、そうではないこともあるということです。
しかし親が語学教師であるということは、少なくともその職業柄、言語を客観的に分析し効率よく覚える方法は知っているはずなので、それをどう自分の子ども用にカスタマイズしていくか、そしてそれができる家庭環境なのかがポイントとなると思います。
言語を学ぶ楽しさも大変さも知っている語学教師。 その経験を自分のバイリンガル育児にも活かせたらベストではないかと思います。